餞別

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カチャカチャ 私はベルトを外し、ズボンの中に手を入れる。 そして、もう片方の手で伊藤恵子の机の引き出しを開けた。 そう、目的の物がここにあるのは知っている。もう何度もそれを手にしたのだから。 私は引き出しの中から歯磨きセットを取り出し、そこから歯ブラシを手にとって見つめた。 触ると、ブラシの部分はまだ濡れている。 私はゆっくりと口を開け、おもむろに歯ブラシをくわえた。 頭の中で、何かが弾けるのがわかる。 ああ、何度経験しても良いものだ。私は、この行為のためだけに何週間かに一度残業しているのだ。 歯ブラシを吸い、恍惚の海を漂っているとゴミ箱の中に白いものが見えた。 これは……。位置的に、このゴミ箱を使うのは伊藤恵子一人しかいないはずだ。 私はゴミ箱の中からその白いものを拾い出した。使い捨てのマスクだった。 マスクの内側には、うっすらと口紅の跡がついている。歯ブラシを口からだし、そっとマスクをかけてみた。 その瞬間、頭を鈍器で殴られたかのような衝撃が走る。鼻腔内に広がる伊藤恵子の匂い。 これは……歯ブラシ以上に刺激的だ。そして、私はその場で果てた。 .
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