*いちご*

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「そう言ってくれて嬉しいけど、一期には一期らしくいて欲しいな。それに俺はそんなに完璧な人間でもない」 そんなことは知っている。 兄さんだって全部が全部完璧じゃない。 兄さんは片付けが苦手だし、 料理だって下手だ。 意外に涙脆いし、 絶叫マシンも苦手だ。 兄さんを慕う人間は、男も女も沢山いるけれど、 兄さんのこんなとこ知らないんだろうな、と思うと、 思わず笑みが溢れる。 兄さんは僕が“追い付きたい”と言ったことを、 兄さんのようになりたい だと思ったようだけど、 本当は少し違う。 確かに僕は兄さんに憧れてるし、 兄さんは僕の人生の上で、 大きな目標であり道標だ。 だけどそれだけじゃない。 僕は………… 「ねぇ、兄さん。僕のいいとこってなに?」 「どうした、急に。一期のいいとこかぁ…、いっぱいあるけど、強いて言うなら、素直なとこかな」 「素直?」 優しく微笑んで、 僕の頭を撫でる兄さんに聞き返した。 「あぁ。凄いことなんだぞ?自分を偽らない純粋な心がないと、素直になんてなれない」 兄さんが誉めてくれたことが嬉しくて、顔が綻ぶ。 だけど兄さん。 僕はそんな純粋な子じゃないんだ。 僕は……、 自分を偽ってばかりだ。
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