序章:拾う神あれば拾う神を拾う者あり

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◆◇◆◇  水気の残った髪の毛を今日干したばかりのタオルで拭き取り、そのまま思春期真っ只中の女性だとは思えない貧相な自分の身体に持っていく。 お風呂に入ってすぐに湯冷めするのも嫌なので水気がなくなった事を確認したらすぐに下着とパジャマを着る。  時刻はもう8時にもなっているので来客の心配もいらないだろう。 ……尤も、元々この家には時々くる親からの仕送りや宣伝のチラシぐらいしかこないのだが。  脱衣場においてあるドライヤーを取り出してリビングに向かう。 「ふぅ……また明日から学校か。 ……めんどくさいな。」  5月16日現在、僕は今年の春から黒野州高等学校に入学していて……ぼっちをしている。 高校に入った入学当初、昔から憧れていた特撮ヒーローのクールキャラをリスペクトした言動をしていたんだ。俗っぽく言うと高校デビューだ。 そしてデビューに失敗した。 自分でも何をしていたんだろうと思う。 だって「空亡(ソラナキ)さんって好きな食べ物何?」って訊かれたら「食に興味などない」だよ? 色々あって同じ中学校の人がいない高校に来ちゃったからそれで引かれちゃって友達一人も出来ないし! よってくるのは「ボクっ娘厨二病合法ロリハァハァ……。堪りませんなぁ」とか言ってる怖い男子だけだし! 僕は可愛い女の子と仲良くしたいんだ! ……いや、百合じゃあないよ?  やっぱり部活とかに入ったら友達ぐらい出来るかなぁ? これ以上休み時間の間ずっと仕送りと一緒に送られてきた「こころ」を読んでおくのは辛い物がある。 なんだよ、あのホモ小説! なんでお母さんは娘を腐らせようとしているんだよ! 僕はBLなんか気持ち悪いからみたくないんだ!
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