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「おい、猫。
もうまどろっこしいのはいいんだよ」
緑髪の37歳ぐらいの男がにゃ五郎に詰め寄る。
あれ? どう見てもオッサンなのになんで制服を着てるんだろ?
そんな疑問を抱かされる格好の緑髪の37歳ぐらいの男……長いからグリーンでいいかな?
そのグリーンが勢いよく詰め寄った割りにはゆっくりとにゃ五郎の首を掴んで持ち上げる。
「結局どうしたらいいんだよ!」
廊下まで響いたであろうグリーンの大きな声ににゃ五郎は顔をしかめる。 いや、実際には猫の表情なんて分からないからしかめたのかは分からないけど。
「我なら仕留められる。
だから我に従え、人間共」
◆◇◆◇
「んぅ……本当にいいんですか?
僕だけ帰っちゃって」
「いいんだよ。
あの猫……サイアだったな。
サイアの手伝いをするだけだしな」
にゃ五郎の説明を一通り聞き終えると、顔色が悪く体力もない僕は家に帰った方がいいのではないのか。 みたいな話になっていった。
まぁ僕も痛いのとか怖いのは嫌なので文句はないが、何故かにゃ五郎だけ不満げな顔をしていた。
理由は僕がいないとにゃ五郎の能力とやらが使えないかららしい。 尤も、能力を使うまでもない相手らしいが。
でも、本当に帰っていいのだろうか?
人の為ではない、にゃ五郎の為でもない、僕の夢の為に。
僕は物語のヒーローに憧れていた。 ……いや、今も憧れている。
こんな作り話の物語みたいな事態に遭遇して、ヒーローになれるチャンスを見逃すの?
「赤口先輩、僕がいてもいなくても変わらないんですよね?」
自分でも分かるぐらいイキイキとした声でヒーローに話す。
「ああ」
肯定。 なら僕はいても問題ない訳だ。
だったら僕はヒーローになる為に、大好きだったヒーローの台詞を吐く。
「そうですか、なら「テメェらと馴れ合うつもりはねーが、一緒に行ってやるよ」です」
……僕が好きなのはダークヒーローだ。
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