第一章:殴る神あれば拾う神あり(後編)

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 にゃ五郎の話によると、犯人を倒す……というよりは狩るのは簡単らしい。 僕ら人間と犯人とにゃ五郎の関係は、草と草食動物と肉食動物のようなもので、僕らは草、犯人は草食動物、にゃ五郎は肉食動物だとか。 犯人という怪奇は人間を食べる事で力を付け、にゃ五郎も犯人を食べる事で力を付ける事ができ、力を付けて神格化するのがありとあらゆる怪奇の目標という事らしい。 ちなみに怪奇というのは簡単に言うと幽霊であり。 悪霊を神と崇め奉る、清濁併せ呑む国である日本で、しかも異常なまでに力が集まっているこの町でのみ幽霊がにゃ五郎のように姿を現し、現世に影響を与える事が出来るとかなんとか。 つまりにゃ五郎は神様になるために草食動物(人間に害を及ぼす者)を食べる、それは僕ら人間にとっても有益な為に僕らにも手伝ってもらおうという事だ。 まさにWinーWinの関係だね。  学校から出るともう外は暗く、街灯がなければ道も見えないような時間だ。 それに誰も口を開こうとしない辛気臭いふんうぃき(←何故か変換出来ない)の為に幽霊でも出そうな感じだ。 まぁ今からその幽霊を探しに行くんだけれど。 「先輩達はなんでわざわざ自分からこんな事に巻き込まれにいくんですか?」  この雰囲気をどうにかする為にずっと気になっていた事を訊いてみる。 「別に……そんな危ない奴がいたら、ゆっくりと寝れないからなんとかしたいだけだ」 少し考える仕草を見せた後に赤口先輩はそんな明らかなウソっぱちを語る。 そう思うなら転校でもすればいいでしょ、わざわざ関わりにいくよりは関わらないようにしてる方がまだ安全だしね。  赤口先輩ではなく、先輩達って言っているのに先輩以外は誰も口を開かない。 緊張しているのか、それとも僕が嫌いだからかは分からないけど、少しばかりショックだ。
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