第一章:殴る神あれば拾う神あり(前編)

2/18

54人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
 僕の朝はカフェオレとクロワッサンを食べる事から始まる。 出来たら和食っぽい方がいいんだけど、作るのが大変だから買い置きしているクロワッサンとカフェオレを食べる事が多い。 その二つなのは単にオシャレっぽいからだ。 「それで小娘、話なのだが……」 「あっごめん、帰ってきてからでいい?」 「…………」  起きるのが苦手な人間の朝という物は総じて慌ただしいと思う。 より多く寝る為に朝の身仕度の時間を削るからだ。 自然の摂理と言えるだろう。 恥ずかしながら、僕も目覚めが悪い方だ。 目覚まし時計を無視したが為に何も食べずに学校まで走る事はよくある。 ちなみにパンをくわえながら走って登校みたいなのはした事がない。 昔、調子に乗ってしようとしたら玄関で靴を履いている時に喉を詰まらせてしまった。 現実とは残酷な物だと再認識させられた事件である。 それによく考えたら普通はクロワッサンではなくて食パンか。  朝食も食べ終わったので身仕度を整える。 「にゃ五郎、僕は学校に行くけどにゃ五郎はどうする?」 「我はにゃ五郎ではないぞ。 我は少しやる事があるのでな、まぁ放ってくれておいたらよい」 なら何の為に僕の所に来たんだよ。 ……寒さや雨風を凌ぐ為ですね、分かります。 猫は飼い主ではなく家に懐くというのはこういう事か……。 「よしっ、僕はもう用意も済ましたから学校に行くね?」  にゃ五郎にそう告げてから外に出る。 いい天気だね。 …………学校行きたくないよ。
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!

54人が本棚に入れています
本棚に追加