第一章:殴る神あれば拾う神あり(前編)

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 僕は鞄を手に持って、喧嘩売ってるのでは? と思えるレベルで紫外線を放ちまくってくる太陽を避けながら学校にまでとぼとぼ歩く。  晴れているのがいい天気というのは間違いだと思う。 僕みたいに強い日差しが苦手な人は勿論。 砂漠などの乾燥した地域では絶対雨の方がいい天気だ。 何が言いたいかというと、さっきから鏡を使って日陰を歩いている僕に太陽光線を当ててくる不審者をどうにかして欲しいという事だ。 太陽の光を「いい天気だ」みたいに言って好む人なら喜ぶのかもしれないが、僕はどちらかというと「はぁ……また晴れてるよ」と思うタイプなんで速やかに止めていただきたい。 正直、目がチカチカして仕方がない。 というかあの人、何がしたいのかが全然分からない。 日陰で歩いている人に向かって鏡で光を反射して当てて何か楽しいのかな? 「あの……止めてくれませんか? 光を当ててくるの。」  勇気を振り絞って不審者に話しかける。 まぁ、一応知り合いなので危険はないから大丈夫だ。 「ふむ、空亡君。 君が我が部に入ってくれるのであれば考えなくはないが」  そんな意味の分からない台詞を吐く不審者。 この人は入学当初からずっと僕を自分の部活に引き込もうとする変な態度とる人。 略して変態だ。 僕を部活に入れたい理由は「君が入れば我が部には六曜っぽい名前が揃うのだよ!」というよく分からない理由らしい。  この変態は赤口という名前で他にもそれっぽい名前の人達がいるらしい。 僕の名字は空亡というのだが、昔の仏滅の呼び方なんだと。 なんて縁起が悪い名前だろうか。 「じゃあいいです」  確かに鬱陶しいけど我慢出来るレベルだ。 それに太陽光なんぞに屈するなんて僕のプライドが許さない。 「待て待て、なら今入るんだったら映画のチケットも付けよう。 どうだ」 「いや、要りませんよ」  ツッコミをしたい衝動を抑えて冷静に断る。 僕はNOと言える日本人なんだ。
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