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ゆらゆらとライターの炎が鉄格子を照らし、少女の顔がはっきりと見えるようになると、藤本は苦々しく顔を歪めた
至る所に出来た青や赤黒い痣や、痛々しい注射の痕
口元には血が流れた跡もあり、やせ細ったその身体全体に血の跡が残る
長くざんばらな髪から覗く目は、不思議そうに自分を眺めている
そんな少女を見て、誰が冷静でいられるだろうか
「あなたは だれ?」
小さく響く少女の声
藤本はもう一度紙に目を通し、そこに書かれた情報とこの少女が一致する事を確認すると、コートのポケットから鍵を出し、少女の捕われた鉄格子を開けた
「俺はな、お前を助けに来たんだ」
もう大丈夫だ、と柔らかく少女を撫で、その酷く軽く小さい身体を抱き上げる
少女はじっと藤本の目を見つめ、口を開く
「もう、いたいことされない?」
「ああ」
「さされたり、たたかれたりしない?」
「ああ」
「けられたり、きられたりも?」
「ああ、もう痛いことも辛いことも、何にもなくなる」
大丈夫だと笑ってやれば、少女はふと瞼を緩め、藤本のコートの衿を小さく掴んだ
どれだけ痛かっただろう
この小さな身体に沢山の傷を作り、それでもこの少女は誰かに縋る事さえ出来なかったのだろう
弱々しくもしっかり自分に縋り付くこの少女を、藤本は確かに愛しいと感じていた
さあ、早くこの少女を光の下に連れ出してやろう
そして温かな食べ物を、布団を用意して
愛して、あげよう
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