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素早く鞄を手にとり、俺と定盛は玄関へ行き靴を履く。
「「いってきま―す」」
扉を開ける。燦々と照りつける太陽が眩しい。
「は―い。いってらっしゃ―い」
稟の声が聞こえてから外に出た。
期待と不安を持って。
バタンと扉が閉まる。
家の中はニュースの声が支配した。
「いって、しまいましたね」
「ああ」
「きっと大丈夫ですよね。あの子たちなら」
カチャカチャと食器を片付けながら告げる稟に何も心配はいらないという風に、明彦は言った。
「あの学校は特殊だ。きっと良い刺激になるはずだよ」
「あなたのお友達が理事長されていると聞いたときはびっくりしましたけどね」
「ま、そのおかげであの学校へ入れたんだがな…」
新聞をパラリととめくる明彦。
そんな明彦を見て微笑む稟。
「ええ、そうですね。そうそう、あなたにこれが…。理事長さんからお手紙です」
「なに?」
明彦の眉がつり上がる。中身を確認して笑った。
「はっはっはっ。あいつも珍しいことを考えるな。これは面白い。稟!今すぐ支度だ!いくぞ世界へ!」
ひゃっほ―と叫んでリビングを飛び出す明彦。
「ふふ。はいはい」
明彦さん嬉しそう。頑張るのよ清盛、さっちゃん。私たちの叶えられなかった夢を託すわ…。
稟は一度明彦を見、片づけに入る。
平家から聞こえてくるのは皿を洗う音、ドタバタと支度をする音、それだけだった。
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