星の囁き

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 その問いに間宮の表情が曇り、俯いてしまった。耳にかけた髪もさらっと流れて見えていた間宮の横顔を隠してしまう。  まずいことを聞いたのかもしれない、と焦る。  何も知らないのに根掘り葉掘り聞いて、失礼にもほどがあるだろうと自分の行動を激しく後悔した。 「うまく、できなくて……」  ぽつりと間宮は言葉を落とすように言った。  何がうまくできないのか、聞きたいのにさっきの間宮の表情を思うと声をかけるのも憚れ、俺は黙って間宮が話してくれるのを待つことにした。 「ずっと、前は……笑って、て……」  間宮の話は分かりずからかったが、頭の中でパズルを合わせるように繋げていけば何を言いたいのかが少しずつわかってきた。  学校の休み時間は親しい友達もいないので何もすることがないから本を読むことにしたらしい。そして、様々な本を手に取ったが間宮には童話が一番合っていたと言う。  幼い頃の間宮はとにかくよく笑う子供だったらしい。  それがどうして笑わなくなったのか、間宮のたどたどしい言葉の合間に俺は名簿を開いて間宮の名前を初めて知った時の事を思い出していた。 「まみや……これなんて読むんだ?」  クラスの男女数人と談笑していたが、俺がそう聞くとすぐに空気が一変したのを覚えている。 「ひさな、だよ。ひ・さ・な。あいつ、転入生だろー」 「なんか暗いよね」 「でも、いいところのお嬢様なんだってぇ。うちの親が言ってた。ここに転校してきたのって、私立でうまくいかなかったんじゃない?って」 「へぇ。私立かぁ……じゃあ、頭いいのか」 「頭悪いよ、昔はよくできたらしいけどぉ。壊れたって言ってたよ」 「なに? 壊れたって」 「あれだよ、心の病気? みたいな?」 「なにそれ、適当」
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