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くすくすと俺を覗いた数人の男女は笑っていた。
その顔が醜く歪んでいるように見えて気持ち悪くなった。
なんとか堪えて名簿に視線を落とした。『間宮緋真』の文字がなぜかとても綺麗に見えて腹の底の溜まった泥を綺麗に洗い流してくれるような感覚に救われた。
「小学、二年生……の、ときに……弟が、生まれて」
間宮には弟がいた。初めて知った事だった。
それからすぐに異変は起こったと言う。
間宮はおねしょをしてしまった。そして、父親は激怒して母親は狼狽えていた。そんな日が幾度と続いて間宮は母親に付き添われて病院へ隠れるように行くと「ストレス」との診断が下された。
それを仕事から帰った父親に告げると「心が弱い」とまた怒鳴られたらしい。「恥ずかしい」とも罵られた。
「そっそれか、ら……うまく、いかなくて」
間宮の呼吸が少し乱れたのを感じた。
「なに、を、し……しても、前は……で、でき、てた……」
「間宮」
「……い、今……でき、できなく……」
過呼吸になり始めているのが分かった。
「間宮、間宮。いいから、少し落ち着け。ほら、大丈夫だから」
そっと肩に手を置くと間宮が驚いたのが伝わってきた。
まずいかも知れないと俺はさっき買ったアイスの袋を取り出した。小さいがこれで何とかできればいいと願う気持ちでいっぱいだった。
「……まなっ、まなべ、くん……」
「うん、苦しいだろ? ゆっくりでいいから、な?」
そういうと間宮はほっとしたように頷いてゆっくりと呼吸を整えていく。過呼吸は今回が初めてではないのかも知れない。
やっと落ち着くと、間宮はまた俯いたまま「ありがとう」と呟いた。
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