星の囁き

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「────」  そんな俺の耳に間宮の声が聞こえた気がした。はっとして辺りを見回したが、誰もいない。  気のせいかと通り過ぎようとした音楽室で間宮の姿を一瞬捉えた。もしかしたらまた気のせいかもしれないと思いつつも確かめておこうとそっと中を覗いた。  間宮はそこにいた。教室の後ろに飾られた肖像画を眺めながら一人呟く声が聞こえてきた。 「ベートーベン、は……右、から二番、目」 「三番目、だよ」  俺の声に間宮は飛び上がって驚き、すぐに怯えた瞳に変わった。 「ベートーベンは右から三番目。二番目はバッハだよ」 「……真鍋くん」  間宮は泣いてなかった。  だが、一歩近づくと間宮の体が強張り小さく後退したのが分かった。確実に警戒されている。  当たり前の事だ。  俺は、間宮を傷つけた。それも一番酷い方法で、裏切った。 「間宮、ごめ」 「わっわかって、た」  言い終わる前に間宮は声を張り上げていた。予想以上に大きな声が出たせいか、驚いた俺よりも間宮の方が驚いていたようで口元を手で押さえている。 「ま、まなべ、くん。……ごめん、ね。えっと……あと、あ……ありが、と」  間宮は笑おうとしたのか、うまくいかず表情が歪む。その目にみるみる涙が溜まり零れ落ちた。  手を伸ばして触れようとしたが、間宮はすっと通り抜けるように俺の横を抜けて音楽室を出て行った。  拒絶された。  その事実が、一人残った俺を打ちのめしていた。 「自業、自得……だよな」  自嘲する気にもなれなかった。
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