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「謝らなきゃ、って……考えて……ふらふら、してて……私、車に……き、気づかなくて」
「間宮、怪我は酷いの?」
俯いたまま首を振って足を見せたが、相変わらず俺に顔を向けてはくれずに背を向けたままだった。
「左足を、骨折して……脳震とう、を起こして……目が覚めなかった、みたい。けど、もう……平気。異常、ないって……退院、も、もうすぐ……で」
ほっと息を吐いた。
よかった、大変なことにならなくて本当に良かったと目の前にいる間宮を見た。
少し顔色が良くないように見えるが、生きていてくれたことが嬉しかった。だが、間宮はまったく違う事を感じていたらしい。
「真鍋くん、あの、これからは……私と……話、しないほうが……」
声が震えていた。
自分と関わらないでほしいと言いたいのだろう。それでも俺は二人でいる時に見せる遠慮しがちな笑顔が忘れられない。
たどたどしくもよくしゃべる間宮の声を聞いていたかった。
「よくないっ」
怒ったように聞こえたのだろうか、間宮の方がぎゅっと小さくなった。
「あ……ごめん、怒ってないんだ。間宮……」
その時、ふと気になったことがあった。間宮が畳んでいた洗濯物だった。松葉つえをついてわざわざ洗濯しなくてはいけないのだろうか?
骨折しただけで病院の個室を取るのだろうか?
「なぁ、誰か……来るか?」
何も答えなかった。
親しい友人もいない間宮の元には誰もお見舞いになんて来るはずがない。
それでも、足が不自由な間宮が洗濯物を自分でするのは妙ではないか。
「親は、来ないの?」
間宮は僅かに頷いた。
子供が入院しているのに、個室に閉じ込めて見舞いにも来ないということなのだろうか。とても信じられない。
「一回も来てないの?」
「さ、最初。……あとは、退院の……時。おかーさん、が……必要な、物を置いて行って、くれた……から。困って……ないよ」
じゃあ、この誰もいない部屋で間宮は一人でずっと過ごしていたのか。
昼も夜もたった一人で───
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