星の囁き

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「間宮といると、無理して笑うこともしなくていいから。楽なんだ、俺はみんなが思うほど感情豊かじゃないしね」 「でも、真鍋くん……か……」  間宮は言葉を切って深く俯くとそのまま黙り込んでしまった。  どうしたのかと、顔を覗き込もうとしたがやめた。そこまでしなくても耳まで赤いのが分かったからだ。  何が言いたかったのかはわからないが、まぁあえて追求することもしなかった。  季節は廻って空気がキンと張りつめている。  図書館を出るとすでに辺りは真っ暗で、見上げた空には星が瞬き始めていた。  吐き出す息も白く、思わず身をギュッと縮めた。 「もうすぐ雪が降るかもな」 「……うん」  俺は間宮を家まで送るようになっていた。最初は途中までといいながら日にちを重ねてやっと家の前まで送れるようになったのだ。  手を繋ぐことは出来なくても、話が途切れて言葉がなくなってもなんとなく暖かいものが心に広がっていた。 「間宮、高校どうする?」  中学三年への進級を目の前にして近い将来の選択はこの頃から始まっている。  間宮は少し俯いて、考えているようだった。  前から自転車から来たので俺は、間宮を壁際に庇うようにして軽く押す。驚いた間宮だったが、自転車が去った後に小さく「ありかとう」と囁いた。  どんなに小さく囁いてもやっぱり間宮の「ありがとう」は俺の心に響く。 「……高校、は……私、行ける……所しか。勉強、出来ない……から」 「俺、間宮と同じ高校がいいな」 「えっ!?」 「間宮と離れたくない。勉強ならいくらだって教えてやるから、同じ高校行かないか?」 「……でも……」  実は密かに考えていた事だった。俺がランクを落として、間宮も少しだけランクを上げる。そうすれば離れずに済むのではないだろうかと期待していた。  間宮は俺を巻き込んでしまうと気にしていたが、俺は俺で間宮一人にするつもりはなかった。  渋る間宮を説得して、中学三年に上がる頃には受験に向けての勉強を二人で始めることになった。  間宮は基礎を理解するのに物凄い時間を要した。根気よく一つ一つ進めるほかになく、一つでも飛ばそうものならたちまち振り出しに戻ることになってしまう。
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