星の囁き

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「手伝うから」  なんとなく照れくさくて顔を見ないで答えた。小さく「うん」と答える間宮の声が聞こえて余計くすぐったいような気持になった。  それから、自然とクラスにいると間宮を探して視線の端で捉えるようになった。  間宮は大体が本を読んだりして過ごしている。  いつも独りだった。  クラス委員を務めていても日直をしなくてはいけない日もある。  みんなが帰った後、日誌を職員室へ届け教室に戻るとまだ帰ってないクラスメイトがいた。  忘れ物でも取りに来たのか、椅子に座って教室の窓の外を眺めている。空は茜色に染まり、雲がゆっくりと流れていた。 「間宮?」  静かに声をかけると、びくりと体を震わせてから慌てて立ち上がる。 「あ……ごめんなさい。すぐ帰ります」 「いや、慌てなくてもいいけど。忘れ物?」  間宮はやっぱり俯いたまま俺を見ようとはしなかった。まるで怯えているようにも感じた。 「……空の色が綺麗で。少し見ていたんです」  か細い声が震えているように聞こえた。 「家に帰りたくないの?」  俺の質問にはっとしたように顔を上げると間宮は慌てて首を横に振った。  違ったか───なんとなくそんな気がして聞いてみただけだった。  確か、いいとこのお嬢様だとクラスの女子が話していたのを聞いたことがある。そんな家に生まれているのだから帰りたくないわけないか。  俺と違って。  間宮は逃げるように別れの挨拶を告げて教室を飛び出して行った。  その背中が頼りなく見えて、俺は視線を剥がせずに消えるまで見送っていた。
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