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ある朝、学校へ行くと下駄箱に小さな手紙が入っていた。
差出人は不明で内容は『お昼休みに校舎の裏にある桜の木の下に来てください』と書いてあった。
親しくしているクラスの男子にからかわれたが、正直気が乗らない。
こんな手紙を中学に上がってから三度も貰うと告白だろうと察しはつくが、誰とも付き合う気もないのだ。
そして案の定、桜の木の下には見かけない女子生徒が立っていた。一年生だと言う。告白されて月並みな言葉で断る。
この場合傷つけないように断るより傷つけてしまうことを覚悟できっぱり断った方が後々面倒がなくていい。
少し涙ぐみながら走り去る背中を見て、間宮を思い出していた。
カランと何かが落ちる音がして、誰かいるのかと音のした方へ行くと校舎の壁に隠れるようにして小さく丸まった間宮がいた。
「なにしてるの?」
「ごっごめんなさい。あの、立ち聞きとか、するつもり、なくてっ……」
ちらりと手元を見ると本と小ぶりな水筒があった。さっきの音は水筒の蓋を落とした音だった。
間宮は昼休みにここへきて本を読んでいたが、そこにさっきの一年生と俺が来てしまったらしい。
別に怒っているわけでもないが、間宮はまだ震えていた。肩より少し高い位置で切りそろえられた髪から細いうなじが悲しく見えて少し痛かった。
「本読んでたところを邪魔してごめん」
俺はそういって間宮の隣に座った。
「ま、真鍋くん」
「なに?」
「……あ、じゃあ……教室にもど」
「いればいいじゃん」
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