星の囁き

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 季節が変わって夏がやってきた。  休日の暑くてどうにかなりそうな午後に散歩がてらアイスを買いに家を出た。  クラスの奴らとつるむのも面倒だった。ただでさえ合わせて笑っているだけなのに休日まで合わせていようとは思わない。  コンビニで涼を取り、アイスを食べながらのろのろと家路についていた。ふと、視線の先に見かけたことのある後ろ姿を見つけた。  頼りなく俯き加減に歩く姿は間宮緋真だ。  どこに行くのか気になって少し後を付けてみた。  人をよけると言うよりさける様に歩道の端を歩く。気が付いた時に顔を上げて辺りを確認するが、また俯いて歩き出す。  どうしていつも俯いているのか、細いうなじが見えるたびに俺の心は痛いと感じていた。  ふらっと何かに躓いたのか体が傾いて、間宮はころんと転んだ。小さい子が転ぶようにあっという間に転んでいた。  駆け寄ろうとしたが、間宮は恥ずかしかったのだろう。すぐに起き上がって服を払いまた歩き出した。  この先には県立図書館しかない。  間宮は図書館へ向かっていたのだ。  このままついて図書館へ行くのもかおしいので、とりあえず声だけはかけておこうと歩調を速めて間宮を呼び止める。  びくっと小さく肩を震わせてからゆっくりと振り向いた。 「あ……真鍋くん。……えっと、こんにちは」  間宮は丁寧に頭を下げて挨拶をしてくれる。俺も習って頭を下げて挨拶をした。なんだか可笑しな光景だったが、なぜか嫌な感じはなかった。 「さっき転んでなかった?」 「えっ!? あの、み、見て……た?」 「たまたま、ね。大丈夫?」  俺が屈んで足を見ると、膝小僧を見事に擦りむいて出血していた。傷自体は大したことないが、間宮は女の子なのだ。  傷が残ったらやっぱり嫌なんじゃないかと思ったが、余計なお世話をしているのかもしれないと言う気持ちも湧いてくる。  迷惑がられていないかと不安がよぎる中、ポケットにあった絆創膏を取り出して貼り付けた。 「あ、ありが、と」
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