星の囁き

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 戸惑い気味に間宮が言うので、やっぱり迷惑だったのかと苦笑いをして見上げた瞬間、初めて間宮の顔をまともに見た。  瞳が綺麗、それが第一印象でそのまま見惚れていた。  いつも髪で表情が隠れているので誰も知らないのかもしれない。  俺しか知らない、そのことが俺の胸をときめかせていた。  だが、間宮はすぐに俺を拒むように体の向きを変える。怖がらせてしまったのか、間宮の方が少し震えているように見えた。  何か話題をと思いながらも頭には何も浮かんでこない。 「図書館、いつも来てるの?」  やっと出てきた言葉がこれだったのにがっかりしてしまったが、間宮は小さくこくりと頷いてくれた。 「本、好きなの?」  間宮はゆるゆると首を振った。図書館に通うほど本が好きではないのか?  思い出してみても間宮はいつも本を読んでいた。なのに、本が好きではないというのは妙だ。 「…………なに、も……することが、ない、から」  風にさらわれそうな声で俺の耳に届いた。  ───何もすることがないから───  意味がわからずにどういうことなのか思案していると、間宮はまた小さく「返して、こなきゃ……真鍋くん。い、いろいろ、あの……ありがとう」と言って図書館へと入って行った。  お礼を言われるほど、俺は何もしていないのに。  間宮はいつも何かに怯えているように見えて仕方なかった。  なら、一体何に怯えているのだろう。顔を上げたくなくなるくらい怖い思いをしているのだろうか。  笑えないくらい悲しいことがあったのだろうか。  気になりだすといろいろと気になってきて、俺は間宮が図書館から出てくるまで待つことにした。本の返却だけならそんなに時間はかからないだろうと高をくくっていたが、甘かった。  暑い最中、三十分は待っただろうか。  思えば、次に借りる本を探すだろうと予測も出来たはずだったが、現れた間宮は手にさっきとは違う本を持って俺を驚いた眼で見ていた。
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