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「まっ真鍋くん、も、本を借りるの?」
「え、いや。間宮を待ってたんだけど」
「あ、ごめんなさい。私……遅くて……用事が、あった、こと……知らなくて……」
「用事って事でもないんだけど……あ、ジュースでも飲まないか? 水分摂らないと倒れるぞ」
下手なナンパにしか聞こえなくて、嫌になる。間宮も断ってくれればいいのにと思ったがなぜか「ありがとう」とまた言われた。
間宮は待たせてしまったからと俺の分のジュースまで買おうとしたが、なんとか押しとどめて俺が間宮の分も買う。勝手に待っていたのに気を使われすぎて少しいたたまれなくなってしまった。
二人で図書館前の石段へ座った。
大きな木が木陰を作ってくれて、そこだけ体感温度が少し下がる。
「何を借りてきたの?」
きっとうざったいだろうと思いながら間宮に問いかけてみた。だが、間宮は髪を耳にかけて少し微笑んだ……様に見えた。
学校では髪を耳にかけるなんてことは絶対にしない。まして微笑む姿など見たことがなかった。いや、微笑んだように見えたのは俺の目の錯覚かもしれないのだが。
ドクンドクンとなる心臓の音がやけに大きく聞こえていた。
そんな俺に間宮は俯いたまま本の表紙を見せてくれた。
童話だった。
「へぇ、そういうの読むんだ」
「童話は、私にも、やさしい、から……」
何もすることがなくて優しい童話を読んでいる……?
俺の解釈が変なのかも知れない。
「間宮はなんで本読んでるの?」
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