昔話

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そういうところは今もあるかもしれません。 テンリさんやユウキさんは皆の中心にいますが、兄さんはそういうことはほとんどありません。 裏に回っていることが多いのはそういうことなのかもしれません。 「あの頃は毎日が騒がしかったわ。苦労も絶えなかった。気づいたら沖縄にいたこともあったし、輪廻の家で遊んでいたら泥棒と鉢合わせしたなんてこともあったわ」 「たいへんそうですね」 「ええ。でも、退屈はしなかったわ。毎日が楽しかった」 過去を懐かしみ、遠い目をするテンリさん。ですが、その瞳の奥にはどこか悲しげな色が浮かんでいました。 「あの日々がずっと続くんだと思っていた。あの日までは……」 その表情の理由を私はしっています。ミコさんが亡くなってしまったのです。 「私達の中心はミコだった。だから、それをなくした私達はバラバラになった。元々繋がりのあった優貴はともかく、輪廻は特にね」 「…………」 「ミコが死んでからは輪廻は学校を度々休むようになったわ。来てもいつも傷だらけ。何をしているのかはすぐに分かったわ」 喧嘩、なのでしょう。兄さんが恐れられているというのは何度も耳にしました。 「自身の弱さを悔い、力を求めて戦いを繰り返した。一年もすれば傷を負っていることなんてほとんどなくなったわね。でも、それが正しいことのはずがない。私達は何度も止めようとして失敗した。そして、あの日……」
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