昔話

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    *    * 「今日こそ輪廻を止める」 「出来るの?今まで何度も失敗したじゃない」 「うん、でもやらないとならないんだ。輪廻のやり方は間違っている。このままじゃいつか取り返しのつかないことになるかもしれない」 決意のこもった瞳。力強く握り締められた拳。優貴が誰だけの覚悟を持っているのか天里にはすぐに分かった。 「今の輪廻を止めるなら力づくしかないわよ」 「分かってる。言葉での説得は駄目だった。だから、今度は輪廻土俵に上がる」 「……強いわよ、今の輪廻は。優貴よりもずっと」 「うん」 「ただじゃすまないわよ」 「うん」 「それでも行くのね」 「うん」 揺るがないその表情に天里は止めることは不可能だと悟った。 「天里、お願いがあるんだ」 「手を出すな。かしら?」 「お見通しか。流石天里だね」 「優貴だからよ。誰でも分かる訳じゃないわ」 わずかに頬を染め、視線を逸らした天里に優貴は首を傾げた。 「とにかく、そのお願い聞いてあげる。ただし、高くつくわよ」 「あはは、うん。輪廻を止めた後になんでも天里のお願いを聞くよ」 「それならいいわ」 気負いのない笑顔を浮かべた優貴に天里は一つ頷いた。
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