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「ん。乗ったな? こぐぞ」
いつもの風景だ。
ただ一つ、いつもと違うのは、両思いだって判明したって事実、……かな?
背中、広いんだよね。顔合わせんのが恥ずかしくて思わず、背中合わせに乗っちゃったけど、こっちの方が余計恥ずかしいな。
――風が、あたしの火照った頬を撫でてく。
きっと今、カガミ見たらあたしたち、顔真っ赤なんだろうなー。
嬉しくて胸の奥がムズムズする。さっきまでの沈んだ気分が嘘みたい。
「つー訳だからさ。これからも末長く自転車こがせてもらいますよ、愛しいお姫様」
背中に頬ずりしてると、気付いたのかアイツがわざとらしく咳払いして言ってくれた。
“今”なんて、びゅんびゅん飛んでくこの景色みたいに一瞬で過ぎてくんだろうけど。
だけど信じてるよ。あたしたちの“これから”は、たった今から始まったばかりなんだって――。
「大好きだよ」
「わーってるっての。ったく、言っとくけど俺は、昔っからお前のことしか見えてなかったんだからな!」
自転車をこぐスピードが速くなる。
明日もこうしていられると良いな――。
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