ニートな魔王とツンデレ勇者

2/21
6061人が本棚に入れています
本棚に追加
/252ページ
 暗雲立ち込め雷鳴轟く空の下、登ってくる者全てを拒絶する断崖絶壁の上に、その不気味で山のように大きな城は建っていた。  周囲は紫色の濃い霧に包まれ、時折激しく光る雷の音以外には、生き物の気配すらしない。ただただ、静寂のみが支配している。  ここは『魔境』――人間どころか、下級の魔物ですら恐れて近づこうとしない超危険地帯。  そしてその中心に位置するのが、崖の上に築かれた巨大な『魔王城』。世界を滅ぼさんとする魔王と、その部下達の本拠地だ。  普通の人間にとって魔王城は入るどころか、近づくことすら考えつかない場所である。自殺するなら、もっと楽な方法がたくさんあるからだ。  だが今日に限って言えば、魔境の、さらに魔王城の内部に、3人もの人影があった。  さらに驚くべきか恐れるべきか、その3人は頭の狂った自殺志願者ではなかった。むしろその、逆だった。
/252ページ

最初のコメントを投稿しよう!