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戦士の話は全く聞かなかったのに、勇者には逆らえないのか、魔王は大人しくギターを片付けて寝袋に戻った。
これでようやく寝られると戦士は安堵したが、隣から自分を見つめる視線をビンビン感じる。
しかし無視。徹底的に無視。何を言おうと無視すると決めた。構えば構うほど魔王の思うつぼだ。戦士は寝袋の中で寝返りを打ち、魔王に背中を向けた。
「……ねぇテッちゃん」
「黙れ寝ろ殴るぞ」
「実は俺さ……今まで皆に黙ってたことがあるんだよね……」
「……!?」
こんなにシリアスな口調な魔王は初めてだ。冗談ではなく本当にただ事ではないと察した戦士は寝袋から飛び起きて、魔王の顔を見た。
自分のループに関することか、男同士でしか言えないことか。魔王の表情は今までの無気力で間の抜けたそれではなく、真剣に悩んでいる顔だった。
「お前……そういうことはもっと早くだな……!」
「ゴメン……。今までずっと我慢してたけど、いつか感情が爆発して皆に迷惑をかけるのは嫌だからさ……」
「……無理はすんな。言える範囲で言ってくれ」
なんだかんだ言って、魔王でも自分達の『仲間』になったのだから悩みには本気で向き合う。それが戦士・テツという男である。
言葉は荒いが胸に熱いものを持つ戦士を信頼し、魔王はゆっくりと、重い口を開いた。
「……実は俺、低反発枕じゃないと眠れないん
「コレが最後だ。黙って寝ろ」
その夜、無駄な時間を使わされた戦士のイビキと、ゴワゴワした枕の感触に泣く魔王の嘆きが、満天の星空に響いていった……。
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