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――探し物はなんだった?
そんなの、とっくに見失ったわ。
――見つけにくい人だった?
すでに、見つけてもらおうって気すらない。
――夢の中で 夢の中で
そりゃあ、行きたいわよ。許されるなら。
でも、それはできない。どんなに身を焦がすような熱い思いで居ても、「もうあなたに会えるなら死んでも良い」と思っていても、それはできないのよ。
私は、人間だから。
「……はぁーーーーーーー……」
ああ、まさに地の底、どんぞこな気分。ため息つくと幸せが逃げるって言うけど、私には逃げ出すほどの幸せがあるのかな。
私は中学生の頃から使っている、赤い小さなラジオのスイッチを切った。黒猫のストラップが揺れる。黒猫柄のくしゃくしゃなパジャマのまま、お母さんが昨日のお昼に干してくれたベッドの上へ背中から倒れ込んだ。
枕元に置いてある、応募で当たった『桜坂っ☆がくえん!』のキャラ八人が描かれている時計を手探りでたぐり寄せ、インクで汚れた手のまま文字盤を眺める。
AM、8:00。今から着替えて、ご飯食べて、自転車のって……間に合うかなぁ……
いいや。一時限目はサボろう。明日もある授業だし、単位はさほどピンチじゃない。
ただ、私にはそれ以上に今やることがある。
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