序章

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「よお」 初めて聞く主人ではない人の声。 わずかにかすれていて、言葉もひとつひとつに重みのある、男らしい優しい声。 彼は振り返った。 蒼色の瞳に映ったのは赤い髪をした短髪の男。 誰だ…? 彼は驚くことなく表情を変えず男を見つめた。 男は引き込まれてそうな気がしたが、無言で彼を見返した。 「お前、名前は?」 男は表情を変えることなく彼に言った。 しかし、彼は逃さなかった。男が息を飲むのを。 目がかすかに妖艶に光ったのを。 またか…。 彼は絶望した。自分をみる目は誰もかも同じなのだと。 彼の銀の長い髪か風にあおられその顔が月に照らされ、露になる。 中性的な顔だちは肌の白さもあいまって、よく映えた。
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