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「どいつもこいつも使えない奴ばっかりだな。まぁ、世にはどうでも良いことだがな。ミカルさえ居れば」
男は城の最上階。ミカルの部屋のドアを開けた。
すると、目の前をカーテンが揺らめき思わず手でどける。
視界に入ったのは赤い髪の男と、その男に抱きかかえられているミカルの姿。
「ミ………」
男が何かを言おうとしたと同時に、二人は窓から飛び出した。
男の目はミカルの目をとらえて離さない。
ミカルは僅かに恐怖の色を見せたが、赤髪の男にゆるりとしがみつくとその表情が安心の色に染まった。
そして、その口が僅かに動く。
『さようなら』
男は耳を疑った。今までずっと大切に世話をして飼ってきたものがするりと手からすり抜けて、全く知らない奴に奪われる。
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