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【久ん家ってどこらへんや?乳尻駅って近くか?】
思いの外、早く返事が来た。
(あれ?うちの近くの太桃駅の隣りだ)
【俺の家は太桃駅近く】
送ってから迂闊にも簡単に送ってしまったことを悔いたがもう遅い。
【今から電車乗って行くから、駅まで迎えに来てくれへん?】
「ヒイィィ!ヒマたん…ヤンキーくの一の襲撃だよ…恐いよお!でも行かないと、相手は雪之丞だし嗅ぎ付けられそうだよね…」
俺は重い足を引き摺りながら駅へと向かった。
「久ぃ♪ホンマに来てくれたんや」
駅でビクビクしながら待ってる俺の背後で潤の声がする。
恐々振り返ると、俺より5㌢ほど低い165㌢くらいの同年代らしい男が立っている。
「何や?もう忘れたんかいな。俺や、潤や」
「えぇぇぇぇ!?」
驚く俺に構うことなく、『ラーメンなっと食いにいこ。ちぢれ麺の旨い店あんねん』と半ばパニクっている俺を引っ張って行った。
「ええ、なんやまだ理解出来てへんようやけど、改めて…よう来てくれたな。おおきに」
潤はテーブルを挟んだ向かい側で頭を下げた。
「俺は、雪之丞が来るかと…」
「はあ?あんなナリしてウロウロできるかいな。それにアレ、バイトやねん。漫研の奴に頼まれたんや。まあ言うてみたら客寄せパンダやな」
潤は運ばれてきたラーメンを見て『旨そうや』と割り箸を割り、胡椒を振り軽く麺に箸を入れて混ぜた。
「あ、久も早よぉ食べな。冷めたら旨いないで。それと来てもうた礼に俺の奢りや。他なんもいらんのか?餃子頼もか?」
何度聞いても、イベントで出会った雪之丞の可愛い高い声だと、俺は少しは期待していたであろう自分を、僅かでも雪之丞に惑わされ心揺れた自分を、心の中で叱った。
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