見る事の叶わぬ夢

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 壱  有名お嬢様学校の高校に通うおきくのクラスに、転入生が来るという噂が流れたのは、3日前の事。そして、今日――  「転入生を紹介する」  教師が黒板に名前を書いていく。その名前を見た瞬間、おきくの目が大きく見開かれた。  しかし、動揺を悟られる事なく、直ぐに落ち着く。誰もおきくに注意など向けていない。教師でさえも。  ひっそりと生活する事を、心がけていたおきくの訓練の賜物だ。  だが、おきくが驚くのも無理はない。てっきり、一からやり直すべく部活のメンバー達に頭を下げているのだろう。と思っていたのだから。  何故この高校に転入して来たのか、少々唖然としてしまったのだった。  教室に入って来た彼女の変わらない姿を見て、安堵する。たった2週間前の事なのに、随分遠い過去みたいな思いを抱える。
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