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「嫌です。怖い。怖くて産めません」
16年前。某所にある大きな屋敷に、16歳になる娘が頑是ない幼子のように、駄々を捏ねて首を振り続けていた。
もう、少女が子を産む事は、決定付けられている。最初に子を産む事を決められ、それから誰の子を産むか、決められた。
明日、彼女はその男へ嫁ぐ事になる――
好いた男と添い遂げる。
それは、少女にとって、夢物語。
男の顔も名前も知らぬ。それは、子を産める一族の女にとって当たり前の事。
家事が出来なくても構わない。所作に問題が有ろうと構わない。
ただ、子を産む事だけが求められる。
子を作る事が出来る男が、一族にいれば、それが当たり前。
子を作る事を求められる。
一族は、確実に少なくなっていた。
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