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…… 嗚呼、分かっていやがるねェ。
多分、其のお祀り云々されている鬼だ。長ァい間窮屈だったぜ、
「其の鬼神様が、何か私に御用が?」
…… 用、…嗚呼。用、否。
礼、…否、ちぃっとだけ違ェ。座興だな。
「座興、」
にぃやり、と、並んだ牙をむき出して笑う、鬼。
…… お前に面白ェものをやろう。
なァに、悪いモンじゃない。お前達が欲しがっていたモンだ。
可愛がってやんな…。
ゆらり、鬼は女に近付いた。
女の身は、まるで凍り付いた様に動かない。
其の女の腹に、鬼の手がすと触れた。
「椿ー!!」
背後より、声。同時、飛び来たものは槍。鬼の居た所を貫いたが、鬼は消え、ダァンと社の扉を貫いた。振り向けば、許婚(いいなずけ)の男が刀を構えている。
「… 樹(たつる)様!?」
「鬼神よ、其の子より離れ給え!!」
ふわり浮いた鬼神は、只げたげたと笑った。笑いながら、其れはすぅと消えて行った。
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