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白夜は身体の線が細い割に図太いのか、そんな不穏な空気など気にもせずに鈴を自分の首に掛けると、
ぼんっ
と土煙を立てて、夏鬼の前から姿を消してしまった。
「え?…………白夜?!」
初めて呼んだその名は、土煙に掻き消され果たして本人のもとへ届いたのかどうか。
煙はもくもくと更に周囲にまで広がってゆき、視界を覆い、ついには縁日ごと飲み込んでしまった。
ーー失われた土臭い灰色の世界の中で、必死になって白夜の姿を探す自分がいた。
その顔はもう無表情で気持ちを隠すことなんてとうに忘れていた。
次第に晴れていく視界の中で、しとねの大声が聞こえた方を振り返る。
「ちょいと!!何なんだぃ、急に!!白夜、あんたその鈴持ってどうする気だぃ!?今更長家に行ったって、手遅れだよぅ!!」
しかしその悲痛な叫びには応えがない。
しとねの顔だけが浮かび上がる。
顔しか見えない。
首から下は…………煙が生暖かい空気と化して消えていきそうなとき、少し離れた向こうの方に胴体を見つけることが出来た。
首がぬぅっと信じられないくらいの長さに伸びている。
ろくろっ首!!
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