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奇妙に伸びた長い首の下で胴体が気味悪くじたばたと動き、しかし伸びた首の先についた頭は相反してもう動こうとせず、なんとも哀しそうな顔だった。
美しく結った黒く光る髪が少し解けて、不気味なのに色っぽくて、つい目を奪われてしまっていたとき、背後でズシッと音を立て、リュックサックが重さを増した。
「うっ?!」
今までも重かったのに更なる重みで夏鬼の細い身体が揺らめく。
と、耳元で小声がした。
「阿呆めが、しっかりしろ」
耳元には……眩しいほど白い毛並みでちいさな体を包んだ、美しい猫がいた。
リュックサックの上にちょこんと小さな前脚をついて、首もとに大きな鈴をぶら下げている。
まるで初めから自分の物だったみたいに、きちんと首もとで収まる鈴は荘厳な金色に輝いている。
小さな体の後ろにはあの長い尻尾が柔らかそうに波打った。
「はく…………!?!?」
もふっと柔らかいもので口元を塞がれ、先に続く彼の名を奪われてしまった。
その柔らかい空豆みたいな掌が頭をぴしっと小突く。
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