38人が本棚に入れています
本棚に追加
俺の選択を、俺のこれからを、翼に応援してもらいたいと言った俺の気持ちは、本物だった。
でもだからこそ、俺の騙(かた)るその場しのぎの嘘の夢に、翼が騙されたフリをしてくれると、俺は分かっていた。
俺は翼の俺への想いと優しさを、翼に未来を思わせる為に、利用したんだ。
――けど、俺は知らなかった。
翼が母さんに頼んで、航空整備士の資料を読み漁っていたこと。
航空整備士は国家資格が必要であり、中卒程度の学力じゃ資格を得ることなんて到底不可能なことを、翼が知っていたということ。
――“兄ちゃんがパイロットになったら、俺は一等航空整備士になる”。
そして、そんな翼の夢を、俺は知らなかった。
翼の夢を後に知ったとき、俺の嘘に、翼は何を思い涙を流していたのだろうかと、俺は胸が張り裂けそうな気持ちになった。
最初のコメントを投稿しよう!