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ピッピッピ……。
無機質な機械音を耳に入れながら、目に込み上げてくる熱いものを絶対に流さないようにと、眉間に皺を寄せ必死に留めていた。
もう、俺にはどうすることもできないほど冷たくなっていく"手"を、両手で包み込みながら――俺は、その時を迎えた。
ピッピッピ……ピー
"兄ちゃん"
「――時――分、吉原翼様、御臨終です」
俺は翼の……弟の手をさらに強く握り、ギュッと、強く目を瞑った。
頬に流れる液体が、顎を伝って翼の冷たい手にかかったけれど、翼が反応を見せることはなかった。
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