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(よくある、勘違いってやつか)
もぎれてしまうんじゃないかというほど、が勢いよく首を横に振った女の子に、ほっとした。
でも―――少しだけ、がっかりしている俺がいた。
******
ポケットに入っていた百円玉一枚、十円玉一枚を使って、俺が見つけたとき手にしていた飲み物を買ったらしい、女の子。
女の子から財布も持た無いまま病院から抜け出したと聞いたとき、つまりお金が無くてもコンビニまで来れるような、近所の病院ということか、と察していた俺は、もしかしたら翼と同じ病院かもしれない、との考えがでてきた。
だがそれはただの俺の勘だし、まさかそんな偶然は無いだろうと、俺は自分の考えを否定していたが……目の前にある病院は、通いなれた、その場所。
「葉月!」
自動ドアを抜けてフロント付近に行くと、眼鏡をかけた四十代後半ほどにみえる男が、慌てた様子で女の子に駆け寄ってきた。
男の瞼は、女の子と同じく赤く腫れている。
おそらく、女の子の父親だろうと思うのと同時に、俺は、ここで初めて女の子の名前を知った。
「今までどこに行っていたんだ!?何だ、その格好は!?」
「え、と、この人に、」
男の剣幕に怯む葉月の視線が俺に向けられると、漸く、男は葉月の隣に立つ俺の存在に気がついた。
「……君は?葉月の友人か?」
俺が男だからか、それとも娘に作業着を着せるような男だからか、俺を見る葉月の父親の目は、あまりいいものではない。
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