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やましいことは、何もない。
とはいえ、あまり親しい間柄だと思わせない方が、今後の葉月の為だろうと判断した俺は、淡々とした口調で答えた。
「……いえ。仕事の買い出しの途中に、コンビニの駐車場でずぶ濡れになっている葉月さんを、たまたま見かけたので、ちょっと服と傘を貸しただけの者です」
「そ、そうでしたか」
「……」
俺の言葉に、ホッと、どこか安心したような息を吐く男の横で、葉月は顔を曇らせていた。
しかし、それに気がつかなかった俺は、葉月の父親からお礼の言葉を受け取り、二言三言交わすと、「それじゃあ、失礼します」と別れを告げ、踵を返した。
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