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感情が読めない、至って冷静な表情。
「こ、殺したのはお前だろっ。お前が首を刺したから…」
そうだ。
自分が刺しただけでは、この男は死んでいなかった。
「この状況で私が殺したって誰が思う?私が泣いて今外に飛び出せば、どっちの言葉を信じるかな?」
説得力のある少女の言葉に愕然とした。
目の前にいる少女は、ランドセルを背負っているだけで、自分よりも明らかに頭の回転が早く、強かだ。
言いなりになるしかないのか。
いや、殺してしまえばいい。
少女に視線を向けた。
「私を殺す?」
顔色ひとつ変えずに問い掛ける少女。
自分の思考など、見透かしているようだった。
「殺したいならそれでもいい。でも、捕まったらお兄さん死刑になるかもね。しかも一人は『幼気な少女』だし」
「その男を殺したのはお前だろ」
少女は小さく溜め息を吐く。
「だから、そんな事は誰も信じないから。手伝ってくれたらお兄さんは何も関わりがなかった事にしてあげる」
大人びた口振りだが、小学生には変わりない。
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