【不知火月】

3/10
前へ
/15ページ
次へ
そこまで考えて、不意に頭の中を一つの思い出がよぎった。 彼女と初めて一緒に行った夏祭り。あの日も十五夜だった。 「また一緒に十五月を見たい」と言った後、真っ赤に染まった可愛い顔が、脳裏に鮮明に蘇る。 無性に彼女に会いたくなって、走り出した。 体力なんて全然無いくせに、思い切り走った。 月が雲に隠れて、光が少なくて何度もこけそうになっても、足は止まらなかった。 会いたい。遇いたい。逢いたい。 唯それだけしか頭になくて。 自分を傷つけるだけだと、分かっているのに。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加