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物静かな街。
あたりは静寂に包まれ、静まり返っている街。
昼間であったならばこのあたりもそれなりな喧騒があるのだが、残念ながら現在空には黄味がかった月が浮かぶような時刻(とき)。
そのため明かりも月光か、歩道端に備え付けられている街灯ぐらいで、周囲にある建物から明かりが漏れ出ているようなことなどなかった。
そんな中で明かり、それも極めて小さいものが散発的にだが発せられるビルがあった。
「あーもー、しつこい!」
エヴァが後ろをチラリとサングラス越しに見やれば、旧型の暗視ゴーグルをつけ、走りながらも腰元に小銃を構え、撃ってくる男が二人いる。さらにその後ろには三名が追走しており、執拗なまでに追いかけてくる。
「なんでこんなことになったのよ……」
思わず口の端から漏れ出る愚痴。
このような面倒極まりない状況に陥った経緯を思い出そうとする。が、
『教えてやろうか?』
『なんだったら教えてあげるッスよ?』
間髪入れずに帰ってくる言葉。
その中に優しさなんてものは入っておらず、茶化しているだけの、いや、むしろ茶化してくれているだけの方がはるかにマシだろうと、直感ではあるが確信に満ちた結論に至る。
だからと言って、はいそうですかと頷けるほど自分が出来た存在ではないことを、エヴァ自身が良く知っている。そのため小声でぼやいたにも拘らずしっかり聞き取り、即座に話しかけてくる二人に対し、苛立ちも隠さずに返答した。
「ちょっと、乙女の呟きを盗み聞き? 趣味悪いわね」
『何言ってんだ』
『作戦行動中なんだから、無線で筒抜けなのは当たり前ッスよ』
ほらみたことかと、つい勢いで言ってしまったことに内心後悔するも、止めることは出来ない。
「それは分かってるけど、あえて聞かないふりをするのが紳士ってものじゃないの」
『そんなもんココに必要ないだろ。それより堂園、予定ポイントの警備が厚くなった、悪いがサポート頼む』
『りょーかいッス』
先程はわざわざ絡んできたのに対し、今度は放置。
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