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初めから自分がいなかったかのようにいきなり終了した会話。
もう一度言うが、人間、分かっていてもやってしまうことがある。
「ちょ、ちょっと、こっちは無視なの!? さっきから銃撃受けてるんだけど!」
慌てて二人にチョーカー型の骨伝導マイクを通じて通信を送る。
追手の銃はサイレンサーを使っているようで、そのため銃撃の音も静かなもの。通信越しであることを鑑みれば、こちらで何が起きているかなんてものは向こうでは分かるはずもない。はずなのだが、
『っとそうだったな、忘れてた。後声がでかい』
「ご、ごめん」
エヴァがどのような状況にいるかちゃんと理解していたのだろう、わざとらしく答えてくる。そのことを理解しているうえで、それでもちゃんと返答があったことにエヴァは若干の喜びを覚える。
銃撃を受けている部分は事実ではあるが、エヴァとしては構ってもらう方が銃で撃たれるより重要なことだった。
自ら望んでいるとはいえ、このような場所で一人でいるのはやはり寂しいものなのだ。
端から見れば、いいようにあしらわれているだけにしか見えないのは、ご愛嬌といったところか。
通信を送ってきた者は向こうでも何かやっているのだろう、かわりに堂園と呼ばれた方からサングラスに内蔵されている骨伝導イヤホンから通信が入った。
『エヴァっち、現在亜聡が迂回しながら目標地点まで行ってるから、暫く時間を稼いどいて欲しいッス』
「了解よ。時間はどれくらい?」
『じゅ――――』
『五分で良い』
亜聡と呼ばれた者が言葉を遮った。
『……五分で出来るッスか?』
『お前のサポートがあるんだろ?』
『そう言われちゃやらないわけにはいかないッスね。ってなわけでエヴァっちは五分だけ時間を稼いで欲しいッス』
「被害はどれだけ?」
『今回は……多少派手にやるぶんには問題無し、但し人への被害は極力避けるようにしてくれッス』
「ラジャ。んじゃいっちょ派手に行きますか!」
そうと決まれば後は早い。
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