1-足の無い少女

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ずっと前、小学生になって間もなくの頃だ。この家に引っ越す前に済んでいたマンションの近くの家に住んでいるといっていたいくつか年上の男の子。いつも一緒に遊んでもらっていたような記憶はある。見た目も随分変わっていたというかかなり大人びていたから最初は気付かなかったが、改めてみると面影はある。 「ゆき兄ちゃん・・・?」 「正解、久しぶりだね。翠都くん」 「え?!知り合い?!」 「感動の再会、といきたいところだけど今日は疲れてるだろう?日を改めて話そう」 「・・・うん、わかった」 「ああ、そうだ。誕生日おめでとう、翠都くん」 聞きたいことはたくさんあるが架神の言うように体はかなり疲労しているようで立ち上がることすらできない。おめでとう、と一言を残して帰っていった架神を見送ることもできず、その日は結局その部屋でうずくまったまま眠った。 緑川はといえば、翠都を一人で置いて行けないと言って家に泊まったのだが正直怖いから一人で寝れなかっただけではないかと気付いている。寝るときなんて翠都の隣にぴったりとくっついていた。大きい体は見た目だけで役に立たないらしい。 「うおお、全身筋肉痛…」 「え、そんなに疲れてんの?」 「今日土曜日でよかった・・・とりあえず風呂だ風呂」 緑川は昨日風呂を済ませたが、架神が帰ってからまた電池が切れたように眠ってしまった翠都は朝になるまで目をさまさなかったのだ。 ぎぎぎ、とまるで錆びたロボットのような動きで歩いていく翠都を見送った。 「死ぬかと思った・・・なんでこんなことに」 「ごめんな翠都~俺が巻き込んだから・・・」 「行くっていったのは俺だし、勝手に見たのも俺だし」 「見た?」 「ほんとに見えてなかったのに、記憶を辿って形にしたのは俺ってこと」 「??」 「俺もよくわかってないけど、多分そういうことだと思う」 うまく説明できないものの、昨日のことを思い出すとおそらく原因は自分にもあるような気がする、と翠都は言う。二人揃って首をかしげていると来客を知らせるチャイムが鳴った。 古い日本家屋のインターホンは音が鳴るだけで話すことができないので出向かなければ鳴らないのだが全身筋肉痛の翠都では門を開けに行くので何十分かかるかわからない。 「緑川、行って」 「はいはいっと」 バタバタ、と騒がしく走っていく緑川が連れて戻ったのはそう懐かしく無い顔だ。
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