1-足の無い少女

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後日改めて話そうと言って昨晩帰宅した架神は一日と経たずに翠都の家を訪ねてきた。心配してきてくれたのかいろいろ差し入れのお菓子も持ってきてくれている。思っているよりも大事らしい。 「やあ、おはよう。翠都くん」 「おはようございます」 「敬語じゃなくていいのに」 「いや、一応先輩なんで」 「真面目だね、君」 「俺敬語苦手なんでやめていっすか!」 「かまわないよ」 「あ、俺飲み物入れて、来ま、・・・ううう!!!」 「俺がやるって!翠都座ってろよ!」 お茶もなしに長話をするわけにもいかないと立ち上がろうとした翠都はずるずる、と床に吸い込まれるように倒れる。慌てて緑川が台所に走っていくが幼馴染とあって勝手知ったるなんとやら、手際よく三人分のお茶を運んできた。 「体、随分辛そうだね」 「全身筋肉痛です」 「君だからその程度なんだよ、翠都くん」 「俺だから・・・?」 「体の中にもう一つ魂を入れたんだ、負荷は大きいよ」 「憑かれた、ってことですよね」 「簡単に言えばね。普通なら憑いた霊に魂が侵食されて精神が壊れるか体が壊れるかするものなんだ」 「え、なにそれ怖っ!!!!!」 「緑川うっさい」 幽霊は憑いた人間にただくっついているだけというわけではない。それぞれやり方は違うが殆どはその人間の魂に侵食していき、精神や体を少しずつ少しずつ衰弱させていく。ただそれができるのは長く留まって力を持ってしまった悪霊など。でも彼女はそうではなかったはず、と翠都が考えていると心を読んだように架神が言葉を続けた。 「七不思議、都市伝説、そういったものを形作るのはなんだと思う?」 「形、作る・・・」 「共通していることはなにかな」 「・・・人の言葉で伝えられるもの?」 「正解。人の言葉はね、良くも悪くも力があるんだ。言霊というものがあると言われてる位だからね」 「あの子に力を持たせたのは人の言葉ってことですか」 「そう。噂が彼女を作り上げた。君は昨日ソレを見たんだろう、翠都くん」 昨日、夢を見ているような心地でぼんやりと見ていた。目が覚めたときも意識はぼんやりとしていたから自分の言葉も架神の言葉も記憶に曖昧だ。改めて架神に言われて、ぼやけていた記憶の輪郭がはっきりしてくる。
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