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そういえば昨日も、ぼんやりとしか見えていなかった視界を辿ったときに彼女の姿を形作った。もしかしたらあの時、姿を追わなければ見えることは無かったかもしれない。
「人の言葉と記憶が霊の形を作ってしまう・・・」
夢の中で彼女はずっと泣いていた。まだ生きていたかったと泣いていて、けれどそれはどうしようもないことだとわかっていた。ずっとずっと悲しかったのは自分を化物のように語った友人達と、徐々にその言葉に侵食されていった体が苦しくて、悲しくて、記憶まで塗り固められてしまいそうで怖かった。それから数年、命日に現れた少年に縋ったのだ。
「そう、最後に君が彼女に足を与えた。足を失ったのは肉体だけで霊魂になったときは足はあったんだと思うよ。でも七不思議の噂が、言葉が、彼女の足を再びうばってしまったんだ。もちろん誰にも悪意はなかったんだ。だってもう何年も前のことだからね。だから緑川くんがそんな顔しなくて良いんだよ」
「う・・・」
「それに、君が翠都君を連れて行ったから彼女はあの場所から離れてやっと成仏できた。君たちが行っていなかったら僕が切らなきゃならなかった。怖い思いをさせずに済んだ」
「退魔師、でしたっけ」
「そう、退魔師」
「切ったらどうなるんですか」
「浄化して成仏させるだけだけど、痛みが伴うし一度死んだ恐怖をもう一度受けさせることになる。それに霊に対してだと力が強すぎて加減も難しいからね」
「霊に対して意外もあるんですか?」
「いろいろね。話すと長くなるし、今じゃなくてもいずれ知ることになるだろうから」
「いずれ知るってどういうことですか」
「ん?だって君、もう見えるようになってるからね」
「見える?」
架神はいろんな部分で話を端折っているので理解できない部分が多いが、今話すべきことではないからあえて黙っている。いずれは知ることになると言われて理解できずにいると架神はにっこりと笑って考えもしなかったことを言い放った。
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