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穏やかそうに笑う架神から出た言葉に、翠都は目を丸くした。
「幽霊、見えるようになってるよ」
「え、いや見えませんけど」
「それはこの家にいないだけだよ。外に出ればわかるけど、今はやめたほうが良いだろうね。体も随分疲れているようだから」
「いやいやいや、昨日だってはっきり見たわけじゃ」
「見たんだよ君は」
「それは夢で見ただけで」
「夢で他人の記憶や過去を見る?普通はできないと思うけどな。それに、夢を見る前に君は彼女の形をきちんと捉えていたと思うけど、違うかい?」
「・・・今まで見たこと無かった。たまたま条件がそろっただけで見えるようになるとか」
「元々素質はあったんだよ。ただまさか今になるとは思わなかったみたいだね、ご両親も」
「ん?なんで両親が出てくるんですか」
「説明してないとはね」
「話が見えません。置いてけぼりの緑川に至ってはアホみたいな顔になってるし」
「君、退魔師の家系の子なんだよ。見えて当たり前なんだ」
「は?!!」
「これに関しては僕よりご両親から聞いたほうが納得できるだろうし、そろそろ御暇するよ」
「いやいやいや、ここでお暇されても困ります!!!あいたたたた」
「はは、無理せず寝ておきなよ。どうせまた会うことになるからね」
「は?!」
「こういうのはね、引き合うものなんだよ」
「架神先輩・・・!!!」
「いいね、その呼び方新鮮で。それじゃあ、またね。翠都くん」
あまりにも突然、翠都の日常はたった一晩で非日常へと塗り替えられ、いつしかこれが彼の日常となっていく。それをまだ翠都も緑川も知らない。あまりにも不可思議で、普通じゃない日常が待っていると知るはずも無い。
今はただ、突然現れた旧知の人と、告げられた言葉に翠都の混乱が続く。
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