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七不思議の怪から2週間ほどが経った土曜日。朝から緑川からの電話で叩き起された翠都は、現在電車に揺られている。
「桜見に行こうぜ、翠都!」
季節はもう6月を目前にしているというのに桜とは。北の方ならまだ可能性はあるのだろうがいくら都会から離れていると言ってもここはそう寒くない。眠いからと電話を切ったのに家にまで迎えに来てしまったので諦めて今に至る。
「狂い咲きっていうんだってさ」
「ふーん」
「もっと興味持ってくれよ!!!」
「お前が持ってくる話ってオカルト関連ばっかだし」
「ええっ?!そんなことないよぉ!」
「声ひっくり返ってんぞビビり丸」
「なにビビり丸って」
「あだ名。どーせまた変な噂あるんだろ」
「まぁな!でも、分かってるのに来てくれたのか翠都」
少々ご機嫌ななめではあるが面倒事とわかっていても結局一緒に来てくれる。
以前は見えてないから付いていくと言っていたが、あの一件で翠都は見えるようになっているはずだ。
あの日、突然現れた架神と名乗った男子高校生は退魔師をしており、翠都に向かって「君も対魔師の家系の子だよ」と言った。
当然最初は信じていなかったし、たまたま見えただけだと翠都自身考えていたのだが幼い頃に接点があったとはいえわざわざ冗談を言うとも考えにくい。
あれから緑川も気になっていたものの、現実的でない話題だったので言い出しにくかった。けれど、今日来てくれたということは見えていないのだろうか、見えているけど心配で来てくれたのかと聞きたいことがたくさんあるのだがどうにも言い出しにくい。緑川のそんな表情に気がついた翠都は小さく息を吐いた。
「あれから見えなかった。でも、父さんに聞いたら間違いなく退魔師の家系なんだと。出張もその仕事でいってたって」
「!」
「改めて聞いても実感はないし、相変わらず見えない。だから信じきれてないんだよな」
「確かめるために、ついてきたってことか」
「そーいうこと!架神先輩が言ったこと、父さんたちのこと、信じるにはもう一度見て見ないとわからない。信じるってか、受け入れるにはかな」
「もし、見えたらどうすんの?」
「どうもしない!俺には何も出来ねーし。父さんもつがせるきはなかったらしいから」
「退魔師って家業なんだろ?跡継ぎとか」
緑川はあんな不可思議な現象も、到底信じられないような家業もあっさりと信じているらしい。
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