1-足の無い少女

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日常とは個人によって違うものだが、「何も無く平穏な一日が続くこと」が殆どの人の平凡だ。今日も変わらず誰かが当たり前の日常を過ごしている。 「おはよー翠都!なあ、翠都七不思議って知ってる?」 「おー、おはよ。緑川」 そんな平穏な一日が始まっていつものように登校し、自分の座席についてすぐのこと。 挨拶から脈絡のない会話に突入するが、どういう経緯で彼がそんな話をし始めたのかと疑問にも思わないほどにこの流れは日常的。翠都の幼馴染である緑川はウキウキと目を輝かせながらもう一度同じことを問いかけてきた。 「七不思議って知ってる?!なあ、なあ!」 「それ聞かなきゃダメか」 「聞いて!!まあ勝手に喋るけど!」 翠都は「はあ」と一つため息を吐いてその話を聞いてやることにした。 「七不思議って学校の?」 「そう!!それ!!!学校の七不思議!」 「で、それが何だよ。テレビで見たとか?」 「それもある!気になって先輩にうちの学校にあるのかって聞いたら教えてくれてさ、足の無い女の子が現れるって話!だから今日見に行こうと思ってさ!!」 「怖がりの癖によく言うよ」 「怖いけど中学生の好奇心ってそれ上回っちゃうよねー!それにほら、見に行ったとしても結局見えないからさ。ああいうのは空気を楽しむもんなの!」 「ふーん?」 「だからさあ」 「一緒に来いって?」 「うん!!」 「絶対やだ」 話し始めた頃から言いたいことは薄々わかっていたものの、一応聞くだけは聞いた。学校の七不思議を確かめたいから一緒に行こうという誘いは好奇心旺盛な中学生男子ならば喜んで騒ぐのだろうが興味が無い。怖いわけではないがそういう類には近寄りたくなかった。 「こんな面白そうなのに?!」 「そりゃ緑川はそういうの好きだろうけど、俺興味ないもん」 「怖いの?!」 「怖くないけど」 「怖くないなら一緒に行こうぜ!」 「いや、今日なんの日か知ってるよな?」 怖くは無い、興味もない、なので今日でなければ肝試しに付き合うことも考えなくは無かった。そして今日がどういった日であるのかは幼馴染である緑川が知らないはずは無い。
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