1-足の無い少女

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特別棟1階、北側の廊下は2年前に工事をして随分綺麗になっているのだがほとんどの生徒が使用することがない。真新しく見えて綺麗な廊下であるのにどこが不気味な空気が漂っているからだ。 確かに日陰になっていてほかと比べて薄暗く見えるのだがそうではなく、どこか異質さを感じると数名の生徒の証言がある。 実際目の前にすると確かにそこだけ切り取られた別の領域のような感覚がする。それを感じているのはどうやら翠都だけらしく、緑川はけろりと笑っている。 「誰もいないみたいだけど」 「みんなここの廊下使わないからなぁ」 「いや、そうじゃなくて。そのお化けもさ」 「まだ出る時間じゃないしな!」 「出る時間とかあるの」 「あるのさ!」 「何時?」 「えーっと17時26分!」 「1時間後かよ。てかなんでそんな微妙な」 「その幽霊の女の子が亡くなった時間だってさ!」 「妙にリアルだな」 1時間待たなければならないため、すぐ近くの階段に並んで座って待つことにした。 あんまり興味はないがどうせ待たなければいけないなら詳しく聞いてみようと思う。翠都がどんな経緯があって七不思議に数えられてしまったのかと聞いてみた。 「工事中の事故だったらしい」 「事故?」 「ほら、あそこでっかいガラス窓あるだろ?この廊下って日当たり悪くて暗くなるから明るくするためにでかい窓をつけたんだって」 「ふーん」 工事中はもちろん立ち入り禁止だったが、女子生徒が2人その工事現場に入った。 薄暗い廊下の工事中に事故があってお化けがでるという噂が流れていたらしいがそれはあくまで噂。事故はひとつも起きていなかった。けれど、肝試しとちょっとした悪戯心で2人は足を踏み入れてしまった。 その頃、丁度ガラスの取り付けをしようとしているときで2人はこっそりとその様子を伺っていたが、どういう経緯があってか1人が作業員の使っていた足場にぶつかり支えていたガラスが滑り落ちた。 「その時のガラスが倒れ込んでた女の子の足の上に…って話」 「っていう噂?」 「いや、それが事故があったのはマジなんだってさ」 「へぇ」 「興味なさそー!」 「んー、もし本当だったとして面白がるのもどうなんだって感じなんだよなぁ」 「真面目だなぁ、翠都」 もちろん翠都だって、心霊やオカルトを楽しんでいる人が人の死を面白がっているわけではないのだとわかっている。
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