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「先生! 叔母ちゃんは!」
「暫く安静だな、命に別状はないよ」
市内の総合病院の病室の廊下で私は先生に詰め寄った。
先生の言葉に安堵した私はそのまま廊下にしゃがみ込んだんだ。
「明日の朝までは面会は禁止だ」
「……、はい」
私は病棟の待合室の長椅子に座って朝を待つことにした。
「ソウちゃんの馬鹿……、叔母ちゃん独りで可哀想だよ」
私は長椅子に座ったままソウちゃんの事を思っていた。
ソウちゃんは私の幼なじみで草太(ソウタ)という名前だったけど皆からは「キャベツ」と呼ばれていた。
キャベツと呼ばれる度に嫌な顔をしていたソウちゃんを、私は一度もキャベツと呼んだ事はなかったんだ。
ソウちゃんの事がずっと好きだったから……。
ソウちゃんは逃げるように川上村を離れて行ったけど、今でも好きなんだよ。
一度もキャベツって呼んだ事がないのと同じで、一度も好きだと言った事はなかった。
ソウちゃんと顔を合わす度に、いつも憎まれ口を吐いていたね。
きっとソウちゃんは、生意気で可愛くない奴だと思っているんだろうな……。
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