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「ソウちゃん来たら、とっちめてやるんだから」
私は舌を出して笑って見せた。
「あはは、みいちゃんも怒ることがあるんだね」
「うん、ある。だって叔母ちゃんを独りぽっちにするソウちゃんを怒らなきゃ、私が怒ったら恐いんだから」
私はまた舌を出して笑ったんだ。
「……、ソウちゃんお願い、来て……」
舌を出しながら締め付けられる胸の中で呟いていた。
「叔母ちゃんお腹空かない?」
「あはは、突然なんだね、私は平気だからみぃちゃんは何か食べてきなさい」
「うん、じゃあ行って来る、果物でも買って来るよ」
私は締め付けられる胸の遣り場を探していたんだ。
ソウちゃんの思いに気づかなかった十年前と、ソウちゃんに思いを伝えられなかった十年前を交差させながら病棟の廊下を歩いていた。
「……、ソウちゃん」
締め付けられる胸の中でソウちゃんの名前を呼んでいた。
ごめんね……、あの日伝えられなくて……。
ありがとう……、一瞬でもこんな私を好きになってくれて……。
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